2022年9月16日(金)か…
2022年9月16日(金)からNetflixにて全世界独占配信、日本全国ロードショーとなる映画『雨を告げる漂流団地』。
本作は、小学6年生の航祐と夏芽、そしてクラスメイトたちが忍び込んだ「おばけ団地」で突然不思議な現象に巻き込まれ、団地とともに海を漂流することになり、思いがけずサバイバル生活を送ることになった子どもたちの、夏の終わりの冒険ファンタジーです。
今回、本作を手掛けた石田祐康監督に独占インタビューを実施。海の色の表現技法や楽曲についてお伺いした【後編】をお届けします。
――美術ボードやイメージボードを拝見すると、現実感とともに、現実感のないファンタジーさが融合されている世界が美しく描かれています。今回、団地や町の背景、大海原など、それぞれ描く際にこだわったところ、細かく指示したところはございましたか?
石田:“現実感”については塩梅が難しかったです。この作品はファンタジーだとしても、基本的に「漂流する」という事象自体はリアルで在りたかったんですよ。海の描き方ひとつでリアルなのか、異世界に来てしまったのか、見え方が分かれるところなので。僕はあくまでリアルな範疇で、リアルなりに描ける大海原の美しさ、空の美しさを表現するように気を付けました。海を美しく描くことに特化させると、例えば南国の海のように、シアンが強くて透明感がある海を描くこともできるんですが、そのようなファンタジーさよりも、これはリアルなんだ、自然の厳しい海の上なんだという表現をしたかったので、観光地的な美しさよりは暗く、濃い青の海になるように描きました。
もちろん美しく映えるような海を描くという考え方も作り手によってはありだと思います。ただ今回は、そういう美しさよりは、7人の子供たちのドラマをメインに描くことを考えていたので、そうなると、頼る島もない太平洋のど真ん中だということが伝わる絵を優先してもらって、その中での美しさ、ハイライト、影や光のバランス、色の調和を追い込んでいます。
――さて、今回、ずっと真夜中でいいのに。さんが主題歌「消えてしまいそうです」と、挿入歌「夏枯れ」を担当されています。それぞれの楽曲をお聞きになったときはどのように思われましたか?作品に通じると感じたフレーズなどがあれば教えてください。
石田:ずっと真夜中でいいのに。さんとは実際にお会いして打ち合わせをしたのですが、どちらの楽曲も予想を超える仕上がりで、本当に良かったです。
挿入歌「夏枯れ」は、修学旅行の中盤を過ぎたあたりの、あともうちょっとしたら家に帰るんだろうな……という楽しいような、寂しいような気持ちを入れ込んでいただきました。作品に通じると感じたフレーズは細かいところですが、歌い始めの「木目に沿うように 並んで眠る夜」という部分ですね。その歌詞が、団地が川の字に並んでいて、その夜景を見ながら夏芽達が寝ている姿を想起したり、自分自身も団地に住みながら実際に毎日その景色を見て寝ているので、ピンと来てしまって。そういったこともメールでお話させていただきました。
主題歌「消えてしまいそうです」は、挿入歌とは違って、旅が終わったあとの楽曲です。辛かった出来事や気持ちをあえて力強く歌っていただいたと思います。歌詞でぱっと思い出すのはサビのまさに「消えてしまいそうです」から「未完成で 低姿勢で 気持ち任せです」や「気配に負けそうです」などです。画を作りながらこれを聞いていて、なんだか…自分ごとのように感じて、心細い気持ちを慰めていました。
――近年、アニメ業界の市場規模は世界的に拡大し、アニメは「クールジャパン」を代表する大きなコンテンツになりました。また、コロナ禍の巣ごもり需要もあり、動画配信サービスの利用率が上昇、本作が配信されるNetflixは非常に多くのユーザーに利用されているサービスとなっています。さらに、コンテンツを新たな価値あるものとして提供するNFTが展開していくなど、アニメ業界は日々進化、発展しているように感じられます。実際、アニメーションを制作する現場の中心にいる監督から見て、今のアニメ業界について、どのように感じていらっしゃいますか?
石田:油断をしていてはいけないな、と感じています。今の時代はアニメを多くの人に親しんで観てもらえる一定の市民権を得ていますが、一昔前はそうではなかったはずです。僕よりも上の世代の方々がいろいろな障壁と戦ってきた努力の上に今があるので、それが自分たちが作品を作る上での環境にいい意味で作用しているはずですし、お客さんにも求めてもらいやすくなっていると思います。ですが同じアニメ業界で見ると、以前はオリジナルアニメ、劇場アニメは監督の名前でしっかり売るような作品が大ヒットするという雰囲気がありましたが、今はちょっと違いますよね。どちらかというと、出版社や作家が事前に作って売れていた原作があって、それを力のあるアニメ制作会社が映像化する、ほうが売れやすいように見えますよね。
そういった様子からも思うのは、置かれている状況なんて簡単に変わるもので、だから油断してはいけないということです。オリジナルアニメより、原作付きアニメ。もっと言えばアニメより実写のほうが、とも、時代が変わればすぐに状況も変わっていく可能性があると思います。実際僕も実写は大好きですしね。
他の方たちにあれこれ言える立場ではないですが、少なくとも自分に対しては状況にあぐらをかいてはダメだと言っておきたいです。作品を作る際には油断せずに気を抜かずに、しっかりとしたものを作らないといけないなと、それだけは感じています。
――スタジオコロリドは、本作はもちろん監督が手掛けられた『ペンギン・ハイウェイ』や、『泣きたい私は猫をかぶる』のような劇場公開作品から、TVCM、アーティストのMVなどさまざまなアニメーション制作を担当されています。今後、スタジオコロリドがより発展していくために、監督としてはどのような作品を作りたいと考えていらっしゃいますか?
石田:それこそ原作がある作品を作ってみたいですね(笑)。オリジナル作品を作る楽しみもありますが、原作ものの良さは確実にありますから。画作りにもっと集中することができたり、物語をより俯瞰してまとめることができたり、後は何より健康にいいです(笑)。
――昨今、世界的にNFTが多くみられるようになってきておりますが、本作はNFTプロジェクト「OCS(Otaku Culture Studio)」の第1弾として進行中です。監督はNFTについてどのように思っていらっしゃいますか?
石田:実は僕自身、NFTについてこれまで何も知らなかったのですが、NFTを担当される方から説明を受けて、理解しましたし、特に今回はNFTプロジェクトの第1弾とお聞きして、光栄に思います。
NFTの話から少しそれてしまいますが、僕は世代的に、データ上の世界でやりとりをするという感覚はよくわかるんです。仕事柄身近に感じやすいと言いますか……。日本のアニメは現在も紙作画が主流ですが、うちは完全デジタル作画に移行していますし、紙という物理的なものをほぼ使用していません。企画書もコンテも作画も背景美術もCGも、すべてデータの中で管理していますので、データの見やすさだったり、一覧性だったりを高めることで、全体の効率が上がっているところがあります。マシンパワーも上げて、自宅でも会社でも同じ環境にしてクラウドも使いつつ両者の作業を同期化しています。仕事以外、趣味の領域にもその考えが侵食し始めていて、音楽も写真もデータ上でコレクションしたり、最近は本も電子書籍の方が楽なのかな……とか(苦笑)。
また、カメラが好きなんですが、フィルム時代のレンズを今のデジタルカメラにも付けられるんですよね。古いレンズだからこそ現代のレンズにはない味のある写真を撮ることができる。むしろ現代のレンズよりも価値があったりします。でも、古いレンズは大体が生産終了しているので、数に限りがあるんですよね。それだけにプレミアがつき、お高い……。
そんなレンズのように、物理現実には放っておいても数の制限が発生します。それは本当に物理的には当たり前の感覚で、だからこそ憧れを生んで、良いとも感じるんですが……素直にそれがデジタルデータの世界でも!という風に自分は解釈しましたし、なるほどと思いました。そういったレンズなどを通して身についていた感覚とも合致するので、興味が湧きもします。アナログからデジタルに移行している時代なのも相まって、NFTはこれから先より発展していく可能性を感じます。
――最後に作品の公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
石田:この子たちにならついていってもいいかな、この子たちなら見守っていたいな、と自分自身も思えるように気持ちを託したキャラクターたちです。その子たちに少しでも親しみを持ってもらえたら嬉しいです。
また、映画をできるだけいい環境で見届けて頂けたらうれしいですが、劇場でも、Netflixで見ることができます。皆さんの都合にあわせて、見やすい環境は整っているはずなので、どのような環境でもよいので、ぜひご覧頂きたいです!
NFT発売後、所有者限定で「石田監督のサイン入りアクリルパネル」プレゼントキャンペーンを実施!!
詳細は後日Otaku Culture StudioのTwitter/Discordにて発表いたしますので、ぜひご確認ください!!
「Otaku Culture Studio」公式サイト:http://otaku-culture-studio.com/
「Otaku Culture Studio」NFT販売公式サイト:http://otaku-culture-studio.com/hyoryu-danchi/
2022年9月16日(金)Netflix 全世界独占配信/日本全国ロードショー
<ストーリー>
まるで姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽。
小学6年生になった二人は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクしはじめた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに
取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。
その団地は、航祐と夏芽が育った思い出の家。
航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在について聞かされる。
すると、突然不思議な現象に巻き込まれ――
気づくとそこは、あたり一面の大海原。
航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。
はじめてのサバイバル生活。力を合わせる子どもたち。
泣いたりケンカしたり、仲直りしたり?
果たして元の世界へ戻れるのか?
ひと夏の別れの旅がはじまる―
<キャスト&スタッフ>
田村睦心
瀬戸麻沙美
村瀬歩
山下大輝
小林由美子
水瀬いのり
花澤香菜
監督:石田祐康
脚本:森ハヤシ/石田祐康
キャラクターデザイン:永江彰浩
キャラクターデザイン補佐:加藤ふみ
演出:渡辺葉/間﨑渓/竹内雅人/木村拓/増田惇人
作画監督:近岡直/西村幸恵/黄捷/加藤万由子/荻野美希/三浦菜奈/薮本和彦/水野良亮/坂口歌菜子/渡辺暁子/平井琴乃/櫻井哲也/宇佐美皓一/篠田貴臣/斎藤暖
美術監督:稲葉邦彦
色彩設計:広瀬いづみ
CGディレクター:竹鼻まゆ
撮影監督:町田啓
編集:木南涼太
音楽:阿部海太郎
音響監督:木村絵理子
企画プロデュース:山本幸治
主題歌・挿入歌:ずっと真夜中でいいのに。(EMI Records)
企画:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
配給:ツインエンジン/ギグリーボックス
製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
公式サイト:https://www.hyoryu-danchi.com/
(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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