2024.11.15

大好評上映中の劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』雨宮天＆伊藤美来にインタビュー！　2人が語る作品とキャラクターの“リアルさ”とその魅力

2024年10月25日(金)から全国劇場にて公開中の劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』。
本作は、自然豊かな愛媛県松山市を舞台に、ボート部に青春をかけた女子高校生たちの成長や等身大の心のゆらぎを描いた作品で、公開後から数多くの絶賛コメントが寄せられています。

原作は、1995年に松山市主催の「第4回坊っちゃん文学賞」大賞を受賞し、映画やドラマとして次々と実写化された敷村良子先生による同名小説。

今回、村上悦子役（悦ネエ）の雨宮天さん、佐伯姫役（ヒメ）の伊藤美来さんにインタビュー。台本を読んだ時の第一印象やキャラクターの印象、アフレコの裏話などたっぷりとお話いただきました！

大好評上映中の劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』竹達彩奈にインタビュー！　今まで演じたことがないタイプのキャラクターへの向き合い方を語る

雨宮さん、伊藤さんが“リアルさ”を最も感じた場面

――最初に本作の台本や絵をご覧になった時の感想を教えてください。

雨宮天さん（村上悦子役／以下、雨宮さん）：絵はすごく綺麗で驚きました！　青い海、青い空、キャラクターの瞳といろいろな色が使われていますし、本当に綺麗に描かれているので、その美しさに驚かされましたね。台本を読んだときの印象は、悦子の最初の長いセリフが、過去から今の挫折について語るモノローグだったので、その語られるエピソードがリアルでしたし、一番印象的です。絵は純粋に綺麗ですけど、キャラクターたちのセリフや心理描写は生々しいなと思いました。

伊藤美来さん（佐伯姫役／以下、伊藤さん）：私も台本を読んだときに、そのリアルさにドキッとしました。誰しも思春期に思ったことがあるようなことや挫折、何かに夢中になることの恥ずかしさとか、そういうものが繊細に描かれていて。原作との違いにも驚きましたね。一部の設定は「令和版」になっていて、登場人物の雰囲気も現代的なのですが、伝えたいことは原作通りにしっかりと表現されているので、その融合が素晴らしいなと思いました。

――お2人が役作りをするなかで一番意識したことは何でしたか？

雨宮さん：リアルなトーンを追求しました。先ほどもお話しましたが、台本の悦子のセリフや感じていることに生々しさがあり、特に悦子のダウナーなテンション感がかなりリアルだったので、セリフに対して抑揚をつけすぎず、アニメっぽい表現に頼り過ぎない……分かりやすい音に入り過ぎない、そのなかで彼女の気持ちが滲むバランスはどこなのか。リアルさを求めながら、それが見る皆さんに伝われなかったら意味がないので、そこを考えながらでしたね。普段のアフレコとは違うアプローチをしました。

伊藤さん：ヒメは独特な空気感がある子で、でも彼女の優しさ、気遣いができるところが声を通じてちゃんと伝わったらいいなと思って、ちょっと大人っぽい雰囲気のなかに可愛さがある、というところを意識して演じました。また、ポジション的にコックスで、掛け声が多いキャラクターでもあるので、そこはメンバーを引っ張っていくような、応援する気持ちを持ってみんなを鼓舞できるように意識しました。

――ボート部の掛け声は独特ですよね？

伊藤さん：最初は難しかったですね……。セリフだけ見てもどういう雰囲気で言うのが正解か分からなくて、勉強をしました。実際にはチームごとに決めていて正解はないということを知ったので、アフレコで監督とお話して、いろいろなパターンを録らせていただきました。

――そういえばアフレコはメンバー全員が揃ってできなかったそうですが……。

伊藤さん：そうですね。ダッコ（兵頭妙子／CV：鬼頭明里）とイモッチ（井本真優美／CV：長谷川育美）が最初かな？　その次に私が一人で、リー（高橋梨衣奈／CV：高橋李依）と悦ネエが一緒。ですので、みんながダッコとイモッチの雰囲気から、自分もこういう雰囲気でやった方がいいかな？　と探りながらのアフレコでした。

雨宮さん：先に収録した方の声を聞きながらできたので、そこから徐々に合わせていきましたね。

――悦ネエとヒメの関係性が本作の軸になっていると思いますが、キャラクターの関係性についてはどのようなテンションで演じていくか、といったお話し合いは事前にあったのでしょうか？

雨宮さん：アフレコが同じ日ではなかったので、すり合わせはなかったですね。

伊藤さん：悦ネエとヒメは幼馴染で、私もそらっち（雨宮さん）のことをデビュー時からよく知っているので、長さは違えど悦ネエとヒメのように、昔から一緒にいる雰囲気は自然と出たような気がします。

雨宮さん：キャラクターが本人と少し似ている部分もありましたし、割と付き合いが長いこともあって、お互いがどう演じるか想像できた部分もあったかなと。もし「初めまして」の方と息を合わせて……だったら、多分あの自然な感じは出せなかったかもしれないです。

伊藤さん：悦ネエとヒメの関係性はすごくいいなと思いますね。いい距離感でした。

雨宮さん：ヒメの距離感が絶妙で、悦ネエの様子を見ながらいろいろと対応してくれて……生まれながらのコックスみたいな（笑）。逆にヒメが何でそんなに悦ネエのことが好きなのかが気になります。

伊藤さん：ね！　ヒメからすると悦ネエの繊細なところ、自分自身と戦っているところとかが眩しく見えるのかも。一生懸命生きている人って応援したくなるし、自分に嘘をつかずに生きる人って少ないので、もしかしたらそうやって頑張っている悦ネエを可愛いなって思っているのかなと。

――作りすぎずに自然に会話をするお芝居については、監督からの具体的な指示はあったのでしょうか？

雨宮さん：私たちがアフレコした段階で、絵がかなり出来上がっていて、口の動きもあったので、アフレコがやりやすかったのもありますが、監督が用意してくださったキャラクターのセリフのテンポ感がそもそもナチュラルだったのかなと。一緒にアフレコできなかったとはいえ、他のキャストさんの演技を当日集中して聞かせていただいたので、一緒だったらそれはそれで自然に掛け合えますが、一緒ではなかったからこそお互いにどう出るかをそれぞれが収録した音声をしっかりと聞いたり、想像したり。そういったことをアフレコ前にちゃんとやったからこそ、あの自然さが出せたのかなと思いますね。わりとキャリアが近い方がメンバーに揃っていたこともあって、それが一番よかったかもしれないです。距離感やテンション感を図れたのかなと。

相手のお芝居をちゃんと聞けるかどうかが大事だと思いますし、きちんと集中しつつも余裕がないとできないので、そのバランス感がいいメンバーだったのかなと思いますね、ちょっと偉そうな言い方になってしまってすみません！（笑）

伊藤さん：そう言っていただけて嬉しいです！　私もこのメンバーでよかったなと思っていたので。私がアフレコしたときには監督がブース内に来てくださって、アニメならではのものとして見せたいところと、以前に実写化されているので、実写として見せたい、リアルなところは踏襲していきたい、とおっしゃっていて、アニメだけれど実写を見ているような、本当に生きている世界を作りたいとお話いただいたので、ナチュラルなお芝居をするというのは「核」として全員のなかにあったのかなと思います。

――ライバル校である港山高校のメンバーについてはどのように思われますか？

伊藤さん：梅子さん（寺尾梅子／CV：竹達彩奈）、独特だったよね？

雨宮さん：確かに……

伊藤さん：梅子さんは、エースでありチームを強く引っ張っていく感じがあって、チームとして見てもすでにプロ意識を持ったチームだなと。私たちが目指さなければならない貫禄があります。

雨宮さん：常勝チームでありながらも、驕りがないチームだなと。努力を重ねていかなかったら自分たちも転落していくことがわかっているので、そういう冷静な視点があるからこそ三津東高校のボート部についても、私たちのチームワークを見て危機感を抱いていて。それはやっぱり驕りがない証拠。本当にストイックなんですよ。梅子がそういうタイプの子だから、彼女を中心にチームが一丸となっているような気がしますね。

伊藤さん：慣れ合わず、やることやるよ！　みたいなチームですもんね。カッコいい！

――悦ネエたちはボート部の活動に対して、とにかく一生懸命に頑張る姿が印象的ですが、お2人は高校時代でも最近でも構いません。何かに一生懸命になったり、情熱を傾けたりしたことはありますか？

雨宮さん：1年くらい前に自転車で琵琶湖を1周したことですね。あれはきつかった……！　お友達3人と2日かけて回りました。お友達の家に泊めてもらいながらやったんですが、運がめちゃくちゃ悪くて、雨も降るし、向かい風もすごくて自転車が全然進まなくて。そんなときに3人で声をかけあって、支え合いながら頑張りました。同じ苦しみを乗り越えていくと絆は深まるんだなと思いましたし、そこで相性が悪かったらその辛さで友情も分解しちゃうので、絶妙なバランスで、チームは成り立っているんだなと感じましたね。いざ東京に帰ろう、となったときには全員が涙で……。「このメンバーだから頑張れたと思う！」みたいに、泣きながら語り合いました（笑）。

伊藤さん：最近ですと自動車免許を取ったことです！　周りの人は「教習所に通っていたらすぐ合格するよ」と言っていたのですが、全然そんなことなくて……。久しぶりに勉強頑張りましたね。

「いい意味で無駄なものがない洗練された作品」（伊藤さん）

――三津東高校ボート部には悦ネエをはじめチームメンバーが5人いますが、ご自身はどのキャラクターのタイプですか？

雨宮さん：昔は悦ネエだったと思います。今はリーが近いかな？　リーみたいに思い立ったらすぐ行動！　大きな声で仲間を集める！　みたいなところがあるので、2人を足して2で割った感じかもしれないです。昔は一人で行動することが多かったのですが、仕事を初めてからは友達を作れるようになりまして。昔はコミュニケーションを取るのが苦手で、人は好きだけど、関わるのが怖くて、避けて、一人でいがちだったのですが、それを克服していったら、リーのようになっていった気がします。コミュニケーションが取れないことがコンプレックスだったので、徐々にそれを克服したら、青春時代にできなかった、友達を誘って出かけるみたいな楽しみを取り戻しています。

伊藤さん：私も悦子の気持ちは分かりますし、でもこういう日もあるなぁ～とか日によって努力しても無理かも……みたいに思うことが多いので、日によって悦子に似ているかもしれません。ただ基本はヒメに近いかなと。

――ずばり、本作の魅力はどこだと思いますか？

雨宮さん：今の世の中、やや暗い雰囲気がありますが、この作品は青春王道物語でありながら、今を生きている私たちを置いていきません。悦ネエの描き方がリアルで、自分と似ていると思えるところから物語に入れますし、描かれている青春の物語も絵はキラキラしていますが、みんなの心理描写はリアルで、一人一人がそこに存在している感じがあって。彼らの発言までもがキラキラしすぎて苦しいところもないので、キャラクターに共感して、作品に没入していった結果、最終的に爽やかな気持ちにさせてくれるところが魅力だと思いますね。優しさを持っている「青春物語」だからこそ、今の人に見てほしいです。

伊藤さん：そらっちが言った通りです。すべてがリアルなトーンで、今ここにこの子たちが実際にいて、実際に苦しんだり、ぶつかったりしながら生きている姿、成長していく姿が繊細に描かれているので、暗くなり過ぎずに、自分とも重ねながら、もしくは高校時代を思い出しながら懐かしい気持ちになれる方もいるでしょうし、今、学生という方や頑張ることがある方には勇気を与えられるところが、いい意味で無駄なものがない洗練された作品だなと思います。

――ボート部唯一の男子部員である二宮くん（二宮隼人／CV：江口拓也）については、どのように思われましたか？

雨宮さん：すごくいいバランスの子だなと。めちゃくちゃ普通の男の子で、すごく優しい子なんですよ。だから女の子しかいない、しかもボート初心者の子しかいないなかでもいい距離感で関われていますし、嫌な感じが全くないのがすごい！　一人一人との会話のシーンを見ても二宮を嫌いにならないんですもん。素敵な男子だなと思います。ただ優しいだけではなく、言いたいことは遠慮なく言うし、アドバイスもくれるし……。もしかしたら今時の男の子っぽいのかなと。男女の壁がなく、恋愛うんぬんとかでもなく、自然体でそこにいる姿は今っぽいかもしれないです。

伊藤さん：こんないい子、いる！？　って思いました。可愛い女の子たち5人を男の子1人でまとめていて、全員にボートのことを丁寧に教えてくれて、普通はできないよなぁと。顧問の先生はいますけど、先生感もあるんですよね。距離感が絶妙すぎる。

雨宮さん：ヒメの男子版みたいな気がする。

伊藤さん：確かに！　でも、ヒメよりも鈍感だよ。

雨宮さん：鈍感は鈍感だよね～。

伊藤さん：裏表のないいいやつだなって思います！

雨宮さん：今を等身大で生きている人だなと。彼には彼なりの悩みもあるかもしれませんけど……。

伊藤さん：悦ネエ的にはもうちょっと気づいてほしい！　みたいなところがあるんじゃないの？　ヒメからしても、二宮くん大丈夫？って思うもん（笑）。

雨宮さん：恋愛に関してはすっごい鈍感！

伊藤さん：まだまだですね。

一同：（笑）

――悦ネエたちは、一生懸命に頑張りながらも途中で挫折してしまったり、諦めてしまったり、でもメンバー同士、励まし合うことで立ち直っていき……と感情の動きが非常に多いかと思います。お2人は悦ネエたちのように頑張ってきたけれど挫折してしまった……というとき、どのようにしてやる気を取り戻していますか？

雨宮さん：私は落ち込んだらすぐに人に聞いてもらいますね。人を頼ります！　私はそもそもがネガティブなので、一人でいるとどんどん負のスパイラルに入ってしまって、何もいいことがないんですよ。だから、とにかく人に会う。会って話を聞いてもらって……でも、そういうときは嘘なく、適切でありながら絶対に私の味方でいてくれる人を選んで、話を聞いてもらいます。それで立ち直りますね。

人と会うことで笑ったり、話したりができるので、そこでやる気を取り戻す感じです。私はありがたいことに友人に恵まれているので、そのシチュエーションごとにこの人に相談しよう！　みたいな方がいて……。

伊藤さん：アドバイス欲しいときにはこの人に！　みたいな人がそれぞれいるんだ？

雨宮さん：そうそう！　悩んでいる事柄に精通している人とかね。対人関係ならこの人、仕事ならこの人、みたいに。

伊藤さん：いろんな窓口があるんだ～いいね！

雨宮さん：私、すぐに落ち込んじゃうから……。

伊藤さん：私は落ち込んだとき、逆に孤独を求め始めます。私、落ち込んでるなぁとなったら、逆にどんどん落ち込みに行くんですよ。行きつくところまで行ってみようと思って。一度暗闇を見て、なるほど、こんな感じか……と思ってから、自分を励ますために映画見たり、動画配信見たり、本も読んだりして、「生きていればどうにかなるか！」って持ち直すタイプ。

雨宮さん：自分で暗闇までの階段を下りていくんだ？

伊藤さん：そう！　自分で暗い気持ちになって、暗闇をこそっと覗いて「今日はこれくらい真っ暗か……」とか「今日はそれほど暗くないか……！」とか。興味津々で様子を見ちゃいます。

――ありがとうございました。それでは最後にファンの方へメッセージをお願いいたします。

雨宮さん：映像の綺麗さに圧倒されると思いますので、その時に見たもの、感じたものをそのまま受け取ってほしいです。そして最低2回は見てほしいんですが、2回目で、細かいところを見る余裕が出ると思いますね。一人一人が何を考えてああいう発言をしているのかとか彼女たちの息遣いが聞えてくると思うので、そこに注目していただけるといいかなと。きっと悦ネエに共感できる、または「いつかの自分だった」と思うような場面もありますので、自分で見て、心に感じるものに、声に耳を傾けていただけたらと思います。

伊藤さん：見ていただけたら分かりますが、どのキャラクターも魅力的ですし、松山の美しい景色や挿入歌、OP、EDも本当に素晴らしいです。すべての調和がしっかりと取れている、胸に刺さるような作品です。何かに諦めかけてしまったり、自分の気持ちになかなか正直になれない方が見たときに、何かを思い出させてくれるような内容になっていますので、心をまっさらにして、白い気持ちで見ていただけたら嬉しいです。

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劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』作品情報

■公開日
2024年10月25日(金)より全国公開中

■STORY
あきらめない。みんなとなら言える。

学校をあげてボートのクラスマッチを行っている三津東高校。誰もが全力で競技に挑む中、2年生の村上悦子はひとり冷めた表情だ。才能もないのに頑張ったって仕方ない……そう気づいてからの悦子は、勝負をあきらめてばかりいる。そんなある日、悦子のクラスに高橋梨衣奈という転入生がやってきた。クラスマッチのボートに感動した梨衣奈は、悦子と幼なじみの佐伯姫を巻き込み、廃部状態だったボート部の復活に奔走する。同学年の兵頭妙子と井本真優美が入部し5人になると、名義貸しのつもりだった悦子も渋々、初の大会に出場することに。試合当日、理想と現実の差に打ちのめされてしまった悦子たち。全員がゴールをあきらめかけた瞬間、悦子がオールを再び握りしめる。「私、もっと上手くなりたい」という悦子の言葉で、5人の気持ちはひとつになる――！

■声の出演
雨宮天、伊藤美来、高橋李依、鬼頭明里、長谷川育美、江口拓也、竹達彩奈、三森すずこ、内田彩

■スタッフ
原作：敷村良子『がんばっていきまっしょい』（幻冬舎文庫）（松山市主催第4回坊っちゃん文学賞大賞受賞作品）
監督：櫻木優平
脚本：櫻木優平、大知慶一郎
キャラクターデザイン：西田亜沙子
CGディレクター：川崎司
色彩設計：田中美穂
美術監督：平良晴佳
撮影監督：権田光一
アニメーションプロデューサー：佐久間周平
アニメーション制作：萌、レイルズ
音楽：林イグネル小百合
主題歌：僕が見たかった青空「空色の水しぶき」（avex trax）
協力：松山市
製作幹事：松竹
製作：がんばっていきまっしょい製作委員会（松竹/VAP/テレビ東京/ WOWOW／愛媛新聞/南海放送/テレビ愛媛/あいテレビ/愛媛朝日テレビ/エフエム愛媛）
配給：松竹