2020年長編映画第2弾『泣き…
2022年9月16日(金)からNetflixにて全世界独占配信、日本全国ロードショーとなる映画『雨を告げる漂流団地』。
本作は、小学6年生の航祐と夏芽、そしてクラスメイトたちが忍び込んだ「おばけ団地」で突然不思議な現象に巻き込まれ、団地とともに海を漂流することになり、思いがけずサバイバル生活を送ることになった子どもたちの、夏の終わりの冒険ファンタジーです。
今回、本作を手掛けた石田祐康監督に独占インタビューを実施。本作を制作するきっかけやキャラクター作り、アフレコ時の秘話をお聞きした【前編】をお届けします。
――いよいよ劇場公開される映画『雨を告げる漂流団地』について、まずは本作を制作することになったきっかけを教えてください。
石田:4年前に『ペンギン・ハイウェイ』という初の劇場作品を制作したのですが、会社としてもそろそろ新しい作品を作らないといけないなという雰囲気がありまして(笑)。前回は原作のある作品だったので、じゃあ次はどうしようかとなったときに、オリジナル作品を作ろうという流れになり、『雨を告げる漂流団地』を制作することになりました。
企画段階ではいろいろな案があったのですが、ひょんなことから出てきたのが“団地が海を漂流する”というものでした。
――“団地が海を漂流する”という案はどのようにして出てきたものでしょうか?
石田:単純なんですが、“団地が海を漂流する”という状況が気になったからです(笑)。変わったものを作りたかったので、“団地が海を漂流する”という案が出て、イメージが浮かんだとき、今まで僕が見てきた作品のなかではそういった設定のものがなかったので、ぜひ作りたいなと。また、団地という佇まいにも興味があったので、よし、これでやるぞとなりました。
今の日本でオリジナルの長編アニメを作るとなった際、例えばファンタジー作品を、説得力を持って作るというのがお客さんの視点としても、作り手の技量としても非常に難しい感覚があるんです。技量の点で言えば、ファンタジーは架空のものなので、本当に存在するかのような説得力ある映像制作というのは生半可なものでは通用しないですし、お客さんの視点で言えば、お客さんも目が肥えてますし、クオリティ的に求められるレベルが上がっている。少なくとも今の自分たちの作り手としての技量だと正直かなわないんですよね。それであれば素直に日常をベースに、その日常に地続きな空間でちょっと不思議なことが起こることの方が今のお客さんの目に叶うことができる。むしろそのほうが、自分たちと接続するからなのか、興味を持たれやすい傾向も感じます。僕自身もその感覚はあって、こういう企画を決めているところもあります。
――『雨を告げる漂流団地』には7人の子供たちが登場します。それぞれのキャラクター作りにあたって、こだわったところを教えてください。
石田:主役の(熊谷)航祐と(兎内)夏芽は、キャラクターを作れば作るほど物語の核心に迫ってくる人物でした。キャラクターを作っていくうえで、僕自身がこの二人と距離が近くなっていき、段々と他人事には思えなくなってしまって。ですので、二人のいいところも悪いところも見えます。僕からはなかなか説明しづらいキャラクターなので、二人がどういう人物なのかはぜひ物語とセットで見てもらいたいです。
ほかの5人は、航祐と夏芽にとって、こういう子たちがいることで全体が救われるかもしれない、という立ち位置で描いています。例えば、派手めなキャラクターでいうと、(小祝)太志や(羽馬)令依菜。子供らしい、わかりやすい反応をしてくれる子がいたらおもしろいなと思って、二人を描きました。令依菜はギャルですね(笑)。ことあるごとにわかりやすい反応をする子で、思ったことをすぐ口に出します。太志は豆柴みたいな気持ちで描いたので、子犬みたいなのが走り回っているなあという感じで楽しんでもらえたらうれしいです(笑)。
そして、騒がしいキャラクターがいる分、彼らを見守る、こういう人がいると安心するな、という気持ちで(橘)譲や(安藤)珠理を描きました。
漂流しているメンバーそれぞれにキャラクター性があって、それらが混ざりながら物語が進んでいきます。自分なりに描きたかった群像劇を、僕自身も可愛がりながら描いたので、見てくださる皆さんにもぜひ楽しんで可愛がってもらえたら幸いですね。
――謎の少年・のっぽは、物語のキーパーソンのように感じます。
石田:航祐と夏芽を描く上では欠かせない存在、重要な存在です。そういえば、のっぽを演じてくださった村瀬歩さんが、「(物語の)後半になると、のっぽくんってママみが出てくるよね」とおっしゃっていまして(笑)。それは僕も感じましたし、最終的にそう思ってもらえるまで描けてよかったなと思いました。彼の正体はぜひ本編で確認してみてください。
――もし、監督が本作の世界に登場する子供だった場合、どのキャラクターとして登場したいと思いますか?
石田:僕が少年として登場するなら、ありったけ遊ぶことを純粋に楽しんでいる太志。少女としてなら、思いのままに言いたいことを言う令依菜でしょうか(笑)。
――ちなみに、監督ご自身が子供だった頃は、どのような子供でしたか?
石田:外で遊んだり、友だちとゲームをしたり、あと工作も好きでしたし、絵を描くのも好きで活発な子だったと思います。僕はサッカー部に所属していたので、サッカーはもちろんのこと運動は全般好きでしたし、秘密基地を作って遊ぶこともありましたね。遊ぶことに夢中になるという意味では太志っぽい要素があったかもしれません。
あと、何かを指揮する子、遊びの中心になるような子、わがままがちゃんと通る子についていって、その子たちの言うことを聞く、聞き手になる立ち回りが多かったと思いますので(笑)、譲っぽいところもあったかもしれないですね。
――アフレコ時にキャスト陣にディレクションされたことがございましたら、教えてください。また、アフレコをしていくなかで、印象的だった出来事、やりとりがございましたら、教えてください。
石田:また太志と令依菜の話になってしまうのですが(笑)、太志役の小林由美子さんはとてもナチュラルに、思うままに彼を演じてくださいました。小林さんにも、この子は豆柴みたいな子なので走り回って楽しんでもらえれば、ということだけシンプルにお伝えしたでしょうか。本当に聞いていて楽しかったですね。
令依菜は、お父さんとお母さんのことが大好きで、ある程度、不自由なく生きてきて、順風満帆な人生を過ごし、自分に自信がある子です。でも、実は他力本願なところがあって……。『雨を告げる漂流団地』は、物語の主軸が夏芽を中心として航祐とのっぽとの関係値にあります。でも、その反対には令依菜もいて。物語のA面が夏芽と航祐、のっぽだとしたら、B面が令依菜です。何不自由なく暮らしていたわがままな子が、いろいろとあった中で一度、自分を顧みることになる。彼女が夏芽に対して言った言葉が返ってくるような、この子にも人の気持ちを理解して共感できるような、実は夏芽と同じような気持ちがあったのだと…という願いみたいなところでも描いています。水瀬いのりさんにはそういったこともお伝えして、見事に演じてもらいました。
あとは令依菜といえば珠理がかかせないですが、花澤香菜さんにはそんな令依菜を見守るように支えてほしいことと、珠理がいなかったらみんなは漂流から帰ってこれなかったんじゃないか、という仮定のもとに映画を作っていることもお伝えしましたね。漂流となると喧嘩している場合ではないので、やはり荒ぶる令依菜を支えられるような珠理のような存在は救いなんです。花澤さんの声と演技は、まさにそれでしたね。
譲も一緒です。譲がいなかったらと思うと……山下大輝さんには譲をありのままにかつ本当に力強く演じていただいて、男子の三バカトリオとしてのバランスもうまくとってもらい助かりました。山下さんからは途中、逆提案をいただいてセリフを微調整したりなど、積極的に一緒にキャラを作っていけて楽しかったですね。
――ネタバレにならない範囲で、本作の見どころについて教えてください。
石田:子供たちが皆で協力して、元の世界に帰るためにはどうしたらいいのか?と悪戦苦闘している姿ですね。オリジナル作品を自分がやるならこれが描きたい、とずっと思っていたことのひとつを今回はやれたので、そちらをぜひ見てほしいです。
2022年9月16日(金)Netflix 全世界独占配信/日本全国ロードショー
<ストーリー>
まるで姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽。
小学6年生になった二人は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクしはじめた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに
取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。
その団地は、航祐と夏芽が育った思い出の家。
航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在について聞かされる。
すると、突然不思議な現象に巻き込まれ――
気づくとそこは、あたり一面の大海原。
航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。
はじめてのサバイバル生活。力を合わせる子どもたち。
泣いたりケンカしたり、仲直りしたり?
果たして元の世界へ戻れるのか?
ひと夏の別れの旅がはじまる―
<キャスト&スタッフ>
田村睦心
瀬戸麻沙美
村瀬歩
山下大輝
小林由美子
水瀬いのり
花澤香菜
監督:石田祐康
脚本:森ハヤシ/石田祐康
キャラクターデザイン:永江彰浩
キャラクターデザイン補佐:加藤ふみ
演出:渡辺葉/間﨑渓/竹内雅人/木村拓/増田惇人
作画監督:近岡直/西村幸恵/黄捷/加藤万由子/荻野美希/三浦菜奈/薮本和彦/水野良亮/坂口歌菜子/渡辺暁子/平井琴乃/櫻井哲也/宇佐美皓一/篠田貴臣/斎藤暖
美術監督:稲葉邦彦
色彩設計:広瀬いづみ
CGディレクター:竹鼻まゆ
撮影監督:町田啓
編集:木南涼太
音楽:阿部海太郎
音響監督:木村絵理子
企画プロデュース:山本幸治
主題歌・挿入歌:ずっと真夜中でいいのに。(EMI Records)
企画:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
配給:ツインエンジン/ギグリーボックス
製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
公式サイト:https://www.hyoryu-danchi.com/
(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ
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