アニメ監督になるには|名監督から名作を生み出す仕事内容と必要な制作スキルまで

アニメ監督とは、シナリオから声優や音楽まで制作に関わるあらゆる判断を下す決定権を持つ、アニメーション制作における最高責任者のことです。後世にまで愛されるアニメを制作できるかどうかはアニメ監督の力量次第と言われるほど、その役割は大きくとてもやりがいがあります。本記事ではアニメ監督とはどんな職業なのか、若手で活躍する名監督からその仕事内容や必要なスキルまでを一挙紹介します。

目次
アニメ監督とは(有名なアニメ監督と名作も含める)
アニメ監督の仕事内容
アニメ監督に必要なスキル・能力
アニメ監督になるためのキャリアとは
アニメ監督は夢とやりがいがつまっている(まとめ)

アニメ監督とは

アニメ監督とは、シナリオからキャラクター、声優、音楽まで制作に関わるあらゆる判断を下す決定権を持つ、アニメ作品における最高責任者です。演出方針を決め、関わるスタッフを取りまとめて能力を引きだしながら制作を指揮し、作品の世界をひとつにまとめる立場となります。
アニメのクオリティを大きく左右するプロフェッショナルな職業だけに、その仕事は作品と紐づけて「名作に名アニメ監督あり」とも言われることもあるほど。ここではまず「日本のアニメ監督といえば」という名監督を、その名作とともに紹介します。

宮崎駿

日本を代表するアニメ監督といえば、スタジオジブリの宮崎駿監督でしょう。東映動画(現・東映アニメーション)でキャリアをスタートさせ、『ルパン三世 カリオストロの城』や『風の谷のナウシカ』で広く知られる存在に。
ジブリ設立後の『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、『もののけ姫』といった作品であらゆる世代から人気を博し、『千と千尋の神隠し』でアカデミー賞に輝くなど世界的にも名を馳せています。

細田守

東映動画出身のアニメ監督では、細田守監督も国民的作家のひとりです。『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』、『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』で注目されると、フリー転向後の『時をかける少女』、『サマーウォーズ』が立て続けにヒット。
スタジオ地図の設立後は『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』を送り出し、『未来のミライ』はカンヌ国際映画祭で上映されるなど国際的にも知られます。

新海誠

新作が立て続けに歴代興収記録に名を連ね、次世代の旗手となったアニメ監督が新海誠監督です。ほぼ1人で制作した短編『ほしのこえ』でアニメ映画の世界に飛び込むと、連作短編『秒速5センチメートル』でアニメファン注目のクリエイターに。
海外の映画賞を射止めた『星を追う子ども』や『言の葉の庭』ののち、興収250億円の『君の名は。』で一気にその名を知らしめました。続く『天気の子』も興収140億円超えとヒットしています。

庵野秀明

社会現象化した『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督も、日本のアニメ監督を語るうえでは外せません。アマチュア時代からクオリティの高いアニメを自主制作し、キャリア初期には宮崎駿監督らのもとでアニメーターを経験。
『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』を経ての『エヴァ』は代表作となり、『新劇場版』をもって完結した一大シリーズとなりました。『シン・ゴジラ』など、実写映画でも高く評価されています。

山田尚子

アニメ業界屈指のクオリティの高さで知られる京都アニメーション所属で、若手ながら活躍目覚ましいアニメ監督といえば、山田尚子監督が挙げられます。京アニにはアニメーターとして入社し、『CLANNAD -クラナド-』で演出デビュー。
20代半ばで初監督を務めた『けいおん!』は、アニメファンだけに留まらない人気を得ました。その後も『たまこラブストーリー』、『映画 聲の形』、『リズと青い鳥』と、話題作を次々に手がけています。

アニメ監督の仕事内容

宮崎駿、細田守、新海誠、庵野秀明、山田尚子……。手がけた作品が名作と評される有名なアニメ監督を取り上げましたが、それではそんな監督たちは、アニメーション制作の最高責任者としてどんな仕事をしているのでしょうか。ここでは、その内容を掘り下げます。

絵コンテ制作

アニメの企画が立ち上がり、脚本づくりやキャラクターデザインの決定に参加した監督は、絵コンテの制作に取り組みます。絵コンテとは、監督がイメージするアニメの完成形を、具体的にスタッフに伝えるための設計図にあたるもの。ストーリーの流れをはじめ、背景やキャラクターの動き方、効果音などの細かな情報を、セリフや秒数、カット割りなどの指示とともに盛り込みます。作品によっては、演出家が担当することもある作業です。

制作関係者との打ち合わせ

アニメ制作に関わるすべてを指揮する監督にとっては、各部門の担当者と打ち合わせをこなし、適切な指示を出すのも重要な仕事です。
演出家と作品の傾向、規制、仕上がりの尺などを固める「演出打ち」にはじまり、原画を取りまとめる作画監督との「作監打ち」、場面ごとの方針を原画や作画の担当者に説明する「作打ち」、シーンに合った背景や色を決める「色打ち」、撮影の進め方を撮影監督に伝える「撮打ち」など、打ち合わせの場面と内容は多岐にわたります。
クオリティだけでなく、作業効率にも影響する工程です。

レイアウトと原画のチェック

画面上のキャラクターなどの配置を決めるレイアウトや原画が完成すると、監督にはそれらが絵コンテの指示通りに仕上がっているかをチェックする仕事が待っています。ここで、絵コンテに沿っていないものは修正されるよう、手直しの指示を出すこともあります。

カッティング(編集)やアフレコの立ち合い

レイアウトや原画をもとに、原画の間の動きを表現する動画、背景画が制作され、色を塗る仕上げを経た素材でアニメがシーンごとに撮影されると、それを絵コンテどおりに繋げるカッティング(編集)に入ります。監督はここで、編集スタッフとともにシーンごとの時間配分や全体的な流れなどを調整。不自然なところがないかのチェックも担当します。

カッティング(編集)を終えたら、いよいよキャラクターの声を吹き込むアフレコの段階となります。アフレコとは監督のイメージに合わせて、音響監督の指導のもと声優が演技し、その音声をミキサーが録音するもの。監督は立ち合いのポジションになるため、気付いた点があれば指摘します。アニメはその後、声優のセリフのほか効果音や音楽を映像に重ねるダビングなどを経て最終的な完成形になり、テレビ放送や劇場での公開を迎えます。

アニメ監督に必要なスキル・能力

アニメ制作の現場では、絵コンテ制作にはじまり、制作関係者との打ち合わせ、レイアウトと原画のチェック、カッティング(編集)やアフレコの立ち合いと、最初から最後まで選んで決める最高責任者となるアニメ監督。それでは、そんな仕事に必要なスキル、能力には、一体どのようなものがあるのでしょうか。ここで具体的に取り上げていきます。

アニメ制作に関する知識や探求心

アニメ監督は現場を統括する立場だけに、必須となるのは制作の流れや各工程に関する知識です。すべてを把握できているからこそ的確な指示を出し、選んで決める役割を果たすことができるでしょう。より良い作品を生み出すためには、アニメと制作について学び続ける探求心も求められます。音楽や撮影などの知識も、作品の出来に反映されるわけです。

ココロ踊る演出能力

アニメの完成度には知識のみならず、映像や音楽、声優に対する監督の演出能力も、大きな影響を与えます。「ならでは」のココロ踊る演出こそ、そのアニメ監督の作品が多くのファンから愛される、何よりの武器となるのです。作品を唯一無二のものとする演出能力を磨くには、日々触れるあらゆるものからヒントを得る、柔軟な発想力も大切となります。

コミュニケーションスキル

いくら知識や演出能力に秀でていても、頭の中にあるそれらを的確にスタッフに伝えるコミュニケーションスキルが無ければ、アニメは監督の思いどおりには完成しません。作品の完成度を高めるうえで、制作に関わるスタッフとの意思疎通は必要不可欠かつ、とても重要なもの。学びながら、円滑なコミュニケーションを取る経験も積む必要があります。

場を指揮するリーダーシップ能力

アニメ監督は、アニメを完成まで率いることができればそれでいい、という職業ではありません。放送や公開に間に合うように進行スケジュールを管理し、関わるスタッフそれぞれが効率的に作業を進められるように場を指揮する、リーダーシップ能力も問われます。スケジュールどおりに作業を進めるため、制作の環境づくりも仕事の一環となるわけです。

……ここまで、アニメ監督に必要なスキル・能力として「アニメ制作に関する知識や探求心」「ココロ踊る演出能力」「コミュニケーションスキル」「場を指揮するリーダーシップ能力」を挙げましたが、それではそれらはどのように身に付けるべきなのでしょうか。次に、具体的なキャリアプランについて触れていきます。

アニメ監督になるためのキャリアとは

アニメ監督へのキャリアとして一般的なのは、美術系の大学や短大、アニメーションの専門学校などを卒業したうえでアニメーション制作会社に就職。その後、現場の制作工程を管理する制作進行や、原画や動画を担当するアニメーターとして経験を積み、演技や映像のイメージを指示する演出を経て、作品全体を統括するアニメ監督に……というものです。

美術系の大学や短大、アニメーションの専門学校で求められるのは、画を描く力はもちろん、演出や編集の技術、美術や映像の知識といった、実際のアニメ制作で必要になるあらゆる工程について、体系的に学びながら理解を深めることでしょう。監督はたしかな知識と経験に基づいた判断が必要とされるだけに、まずは徹底的に土台を固めるべきなのです。

学校卒業後、アニメーション制作会社に就職できても、すぐに監督になれることはそうないでしょう。制作進行やアニメーターからキャリアをスタートさせ、最終的に目指せるのが監督という立場です。なお、制作進行から制作の仕事を経れば現場の総合的な知識は身に付くため、たとえ絵が描けなくても監督になる道は残されています。宮崎駿監督らがアニメーター出身の一方で、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督などは制作の出身です。

アニメ監督の働き方には、京都アニメーション所属の山田尚子監督のように制作会社の社員のパターン、細田守監督や新海誠監督がかつてそうだったようにフリーで活動するパターン、宮崎駿監督や庵野秀明監督のように自分で制作会社を設立するパターンなどがあります。

参考資料(ポプラ社『職場体験完全ガイド 35 アニメ監督・アニメーター・美術・声優』P16)

アニメ監督は夢とやりがいがつまっている 

具体的な名監督の例から仕事内容、必要なスキル・能力とそれを獲得するためのキャリアまでひととおり紹介してきたアニメ監督という職業。『BLAME!』の瀬下寛之監督によると、そのやりがいは特に、「作品を観たお客さんが感動してくれるとき」「自分の頭の中にあった物語が目に見える作品になったとき」にあるそうです。

制作側に憧れるアニメ好きならば、このようなやりがいを感じられるアニメ監督は、きっと天職になるはず。まずは「○○○」を見てみることで、必要なスキル・能力のひとつである「アニメ制作に関する知識や探求心」を磨く第一歩としてもいいかもしれませんね。

参考資料(瀬下寛之監督コメント→汐文社『夢活!なりたい!アニメの仕事③監督・背景美術・音響ほか』P10)

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