マンガ編集者になるには?仕事内容や求められる能力を詳しく解説!

近年、アニメ『バクマン。』やドラマ『重版出来!』などのさまざまな作品で、マンガ編集者の仕事を見かけるようになりました。
マンガに関わることができる憧れの職業である一方、その仕事内容がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、マンガ編集者の基本的な情報や、そのなり方を紹介していきます。

マンガ編集者とは?

マンガ編集者は、マンガ家が作品を作り上げるサポートをする職業です。マンガ家に原稿の締切を守ってもらう、物語をより面白くするための提案をする、作品の校正をおこなうなど、実に多くの役割をマンガ編集者は担っています。
その際、マンガ家の作品を読者目線で評価することがマンガ編集者には求められます。マンガ家が完成度の高い作品を仕上げるために不可欠であるのが、このマンガ編集者という職業です。

マンガ編集者の仕事内容と意義

では、マンガ編集者は具体的にどのような仕事を行っているのでしょうか。ここでは、マンガ編集者の仕事を大きく6つ紹介していきます。

ストーリー構想を練る

マンガ作りは、物語の展開を考えるところから始まります。マンガ家ばかりがストーリー構想を考えるのではなく、マンガ編集者もその内容に提案をしていくことが求められます。マンガ家との打ち合わせを繰り返し、物語の展開や世界観をより具体的なものにしていくのです。

ネーム・プロットの確認

マンガ家のプロットやネーム(各話の展開やコマ割り、セリフなどを大まかに記したもの)の内容を確認するのも、マンガ編集者の大切な仕事です。ネーム・プロットが当初の物語の方針からずれていないか、客観的に見てわかりにくい場面がないかをチェックしていきます。それと同時により面白くするための打ち手の提案や、参考資料の用意などもおこないます。

進捗管理

実際にマンガ家が原稿作成をはじめても、マンガ編集者の仕事は終わりではありません。マンガ編集者はマンガ家と密に連絡を取り合い、進捗の確認をこまめにおこないます。もしも原稿作成が遅れると、印刷・発行に大きな影響を与えるからです。万が一締切に間に合わない場合には、印刷所や掲載誌の調整をマンガ編集者がおこなう必要があります。

校正・校了

マンガ家が仕上げた原稿に、誤字脱字がないかの最終確認をおこないます。このときマンガ編集者はそのマンガの第一の読者として、客観的な視点からのチェックをしていきます。この後、完成した原稿を印刷所にまわし、印刷後の原稿を確認すれば校了となります。このように多くの過程を経て、マンガの発行はおこなわれます。

読者アンケートの確認・分析

雑誌にマンガが掲載された後には、読者アンケートを確認・分析していきます。期待通りの結果が出なかった際には、その原因と修正点をマンガ家と話し合います。この際、読者人気を取り戻そうとするあまり、作品の軸がぶれることがないように注意しなくてはなりません。

読者からの支持を得るために必要なことを、マンガ家同様にマンガ編集者は日々考える必要があります。

新人マンガ家の発掘・育成

編集部には数多くのマンガ家志望の人の原稿やweb作品が持ち込まれます。その1つ1つに目を通し、新たな才能を発掘することもマンガ編集者の仕事です。新人マンガ家に適切なアドバイスをしたり、アシスタントの仕事を紹介したりすることで、新たな才能を育成していきます。

マンガ編集者になるには?

実際にマンガ編集者になるためには、どのような能力や資格が必要なのでしょうか。

マンガ編集者に資格は必要?

マンガ編集者になるために、必要な資格は特にありません。なぜならマンガ編集者として必要な能力と経験は、実際に雑誌の発行までに必要な手順を踏んだり、マンガ家との信頼関係を構築していったりすることで培われるからです。マンガ編集者になる時点では、マンガへの深い造形や情熱を持っていることの方が重視されます

マンガ編集者の学歴

マンガ編集者に携わる出版社への就職は、非常に採用の倍率が高くなります。そのため大手の出版社ともなると、書類選考の時点で学歴を見られている可能性は否定できません。事実として、大手出版社に就職するのは難関大学出身の学生が多いようです。
しかし学歴で判断しているのではなく、選考の一環である筆記試験を突破する学生が、難関大学出身の学生に多いだけの可能性もあります。いずれにせよ、出版社への就職を目指すのであれば、しっかりと勉強をするにこしたことはなさそうです。

マンガ編集者に求められる能力

マンガ編集者の仕事をする上で求められる能力を、大きく5つ紹介していきます。

マンガの専門知識

マンガ編集者には、作品の構想や展開に対して適切な助言をするために、マンガの専門知識が必要です。単にマンガを読み込んでいるというだけではなく、売れているマンガの特徴を正確に把握していることが求められます。

コミュニケーション能力

マンガ編集者は、マンガ家と二人三脚で作品を作り上げる必要があります。作品への助言をしつつも、マンガ家のモチベーションを下げないよう注意しなくてはなりません。マンガ家と円滑に仕事を進めるためにも、コミュニケーション能力はマンガ編集者には大切です

作品を客観視する力

マンガ編集者は、マンガ家の作品を客観的に評価し、改善点を伝える必要があります。マンガの専門知識を生かしながら、読者視点に立って、作品に伝わりにくい箇所がないかチェックしなければなりません。

発想力

マンガ家の作品をさらに人気の出るものにするために、マンガ編集者に発想力は不可欠です。柔軟な思考とアイデアでストーリー構成や物語設定を考え出し、マンガ家をサポートする必要があります。

スケジュール管理能力 

マンガ編集者は、マンガ家が作品を締切に間に合わせることができるように、その進捗を管理していかなければなりません。また、マンガ編集者は同時に複数のマンガ家の担当もしているため、その全ての原稿の進み具合を細かにチェックしていく必要があります。

マンガ編集者の平均年収

マンガ編集者の平均年収は、一体どれほどなのでしょうか?

平均年収
大手出版社600ー800万円
中小出版社350ー600万円

大手出版社の場合

大手出版社に就職したマンガ編集者の平均年収は600万円ー800万円とされており、他の業界と比べても高水準であるといえます。さらに編集者としての経験を積み、編集長へとキャリアアップをしていくことで、年収はさらに上がっていきます。

中小出版社の場合

一方で中小出版社となると、平均年収は350万円ー600万円とされています。出版社の場合、扱っている書籍や雑誌の規模がそのまま年収の差へとつながるようです。そのため、中小出版社と大手出版社の平均年収にはやや開きがあります。
しかしながら中小出版社でも大手出版社同様に、経験を積みキャリアアップをすれば、年収も増えていきます。

大手出版社の就職難易度

マンガの出版社は、高い人気の割に採用の人数が非常に少ないため、就職するのは簡単ではありません。とりわけ、マンガと聞いて名前が思い浮かぶような大手の出版社には、数十人の採用枠に数千人の応募があり、非常に就職難易度は高くなります。ここでは、特に有名な出版社の選考情報を紹介していきます。

講談社の選考の流れと通過率

講談社は『週刊少年マガジン』を中心に、『進撃の巨人』などのさまざまな人気マンガを世に送り出しています。講談社は、応募者数と採用人数、各選考の通過率などの選考情報を詳細まで明らかにしていました。はたしてその採用の難易度はどのくらいなのでしょうか。

実際の選考フローと通過率

2021年卒の学生は、講談社に就職するために8つのステップを踏んでいました。
そのステップは以下の通りです。

・書類選考
受験者4,375人→通過者1,511人(通過率34.5%)
・筆記試験
受験者1,492人→通過者789人(通過率52.9%)
・第一次面接(オンライン)
受験者774人→通過者294人(通過率38.0%)
・第二次面接(対面)
受験者270人→通過者82人(通過率30.4%)
・第三次面接(対面)
受験者82人→通過者24人(通過率29.3%)
・総務面接(オンライン)
受験者24人→通過者24人(通過率100%)
・第四次面接(対面)
受験者24人→通過者23人(通過率95.8%)
・内々定
入社予定人数23人


(引用:講談社, 「選考の流れ|RECRUIT|講談社2022年度定期採用」, < https://recruit.kodansha.co.jp/2022/guide/ >2021年8月閲覧)

最初の書類選考の応募者が4,375人だったのに対し、最終的な入社予定人数はわずか23人でした。各ステップの通過率の低さからも、就職難易度の厳しさがわかります。
講談社は、2022年度はまた新たな方針の下に採用活動を行うとしています。講談社への就職を希望する人は、公式の採用情報を常にチェックするようにしましょう。

他大手出版社の採用情報

その他の大手出版社も、採用情報を一部明らかにしています。ここでは、集英社、小学館、KADOKAWAの採用情報を紹介していきます。

集英社

集英社は『週刊少年ジャンプ』などの雑誌を取り扱っており、『ONE PIECE』『鬼滅の刃』などのマンガを世に送り出しています。その採用人数は例年20人以下と、講談社同様に採用人数が少ないです。公式サイトからは、採用までに書類選考とwebテストに加え、面接は少なくとも三次面接まであったことがわかります。
また、集英社の内定者は選考対策として、本やマンガをはじめとした、エンタメのあらゆる情報にアンテナを張っていた人が多いようです。

(参考:集英社, 「募集要項|集英社 2022年度定期採用情報」, < https://www.shueisha.co.jp/saiyo/recruiting/requirements/ >2021年8月閲覧)

(参考 : 集英社, 「2021年度内定者座談会|集英社 2022年度定期採用情報」, < https://www.shueisha.co.jp/saiyo/recruiting/talk/ >2021年8月閲覧)

小学館

小学館は『名探偵コナン』を連載している『少年サンデー』などの雑誌を取り扱う出版社です。2022年度は「あつまれ、変質者!」というテーマで採用ページが作られています。採用人数は2017年から2021年では20人未満で、他の大手出版社同様に採用人数は非常に少ないです。
公式サイトにおいて、大学の成績や浪人・留年の経験が、選考結果に直接影響することはないと明記してあります。一方で「これまで何を経験してきたか」が選考において大切なポイントとして挙げられています。

(参考 : 小学館, 「採用スケジュール/採用実績 | 小学館 2022年度定期採用サイト」, < https://jinji.shogakukan.co.jp/2022_teiki/recruit/schedule/ >2021年8月閲覧)

KADOKAWA

KADOKAWAは『ケロロ軍曹』などのマンガを連載している『月刊少年エース』をはじめとしたマンガ雑誌を取り扱っています。採用実績は2017年から2021年において20-40人と、他の大手出版社に比べると、採用人数は若干多いです。
「”好きすぎる”は才能」というテーマのもと、2022年度の採用がおこなわれています。求めている人材として、「価値創造者としての力と覚悟のある人」を募集しているようです。

(参考 : 株式会社KADOKAWA, 「KADOKAWA RECRUITING 2022」, < https://ir.kadokawa.co.jp/recruit/2022/ >2021年8月閲覧)

マンガ編集者という選択

マンガ編集者の仕事は、マンガ家が作品を世に送り出す上で不可欠な仕事です。その仕事内容は多岐にわたり、求められる能力もさまざまです。また、マンガ編集者になること自体の難しさもおわかりいただけたと思います。
しかしそれだけ、「好きなもの」に関わることのできるマンガ編集者は魅力的な仕事です。マンガが好きで好きでたまらないという方は、マンガ編集者も将来の選択肢の一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。

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